自叙伝の概要
一般的な、他者による伝記は通常、非常に広範囲にわたる資料や視点を基にしている。しかし、自叙伝は、完全に執筆者である本人の記憶、回顧、回想に基づいており、資料を利用するとしても記憶の補助としてであるという点で一般の伝記とは異なっている。
古代ギリシアやローマでは、こうした性格の書き物を、アポロギアと称した。本質的にそれは、内省というよりも、自分の採った政治的な言動についての自己弁明の書であったからである。アウグスティヌスは、彼の自叙伝著述に「告白」という表題をつけた。
ジョン・ヘンリー・ニューマンの自叙伝は、まさに彼の人生の自己弁明であった。ジャン・ジャック・ルソーもまたこのタイトルを踏襲した。自伝というものを一般的に広めたのはベンジャミン・フランクリンである。
漢字圏では、前漢の司馬遷が「史記」で最後の章に「太史公自序」を置き、解説と自叙伝を兼ねた。続いて班固が「漢書」でそれを踏襲し「叙伝」を最後に置いた。
自叙伝と回顧録との違い
ローマ帝国時代の弁論家リバニウスは、彼の弁論のひとつとして、人生の回顧録を作ったが、それは公にする類の物ではなく、自身の研究の内だけで読まれたであろう文芸的な物であった。
回顧録(回想録)と自叙伝とは少々異なる。自叙伝がその人物の「人生や生涯」に焦点を当てるのに対して、回顧録は、自身の記憶や見解および感情に重点を置いて、より狭い範囲(特定の事象や事件)について述べられる。
近代の回顧録はしばしば、過去の日記や手紙、写真を基にしている。
1980年代頃までは、著名人以外が回顧録を書いたり出版したりすることは稀だった。しかし、『アンジェラの灰』や『 The Color of Water 』といった回顧録が好評を博し、多くを売り上げたことにより、多くの人々がこのジャンルに手を染めることとなった。
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